いつもの森の散歩の途中で、ジョギング姿の30代とおぼしき男性が上を見上げていた。手には2mくらいの木の枝を持っている。
そして何かを拾って後ろを向いて、ぱぱっと口に運んだのを私は見逃さなかった。
近づいていき「何があるんですか」と聞いた。
ちょっと恥ずかしそうに「ヤマモモです」
上を見るとなるほど、赤い実がたくさんなっている。
「私にもひとつくださいな」
「では、よさそうなのを・・・」
そして、手に持っていた木の枝でつっついたら、ヤマモモの実がばらばらと3,4粒落ちてきた。
それを拾って食べてみる。すっぱい。
「これなんかがちょうど熟れてよさそうです」と言ってひとつ渡してくれた。
さっきのより黒くて熟れている。
うん、さっきのより甘い。初めて食べたが、ちょっと独特のくさみというかにがみというか、くせがある。
「おいしいですね」
「好きなんですよ。すっぱくて」
「だいぶ長いこといらっしゃるみたいですね。指が真っ赤・・・」
「あはは、長いこと、います」
「ありがとうございました。ごちそうさま」
と言って通り過ぎた。
なんか、それだけの会話だったのに、さわやか~な気持ち。
相手が爽やかスポーツマン風の若者だったからかな、いや、おじさんでもおばさんでも爽やかだったと思う。
笑顔の交換ができたからかな。
15分くらいして、私はその場所に戻った。
よかった、もういない。さっきの枝がちゃんと木にたてかけてあった。
そして、もう3回ばかり、つっついてヤマモモの実をおかわりした。