10月はマイ健康診断月間である。
長年続いた私の習慣である。
元職場では年に1回健康診断を受けることが職員に義務づけられていたので、40過ぎてからは年に1回10月と決めて人間ドックを受けていた。
40過ぎると、心電図やら胃透視(バリウム)やら検査項目が増えるので、それまでは職場にやってくる検診車でもよかったが、男性が多い職員の中で列に並んで、ちゃんと仕切られてはいるものの、隣で服を脱いだり着たり、また脱いだり着たりするのはおっくうで、ここ15年くらいは人間ドックを受けていた。
ついでにドック以外でも婦人科の定期検診(子宮筋腫持ちである)や、歯のクリーニング(場合によっては治療が見つかることも)や、ほかにも気になることがあればこの機会にと、自分で決めて受けるようにしていた。
健康診断の中でいやだったもの、つらいもの、が胃透視(バリウム)だった。
胃カメラを選んでもいいのだが、これも本当につらくドック以外の病院受診で全身麻酔でしか受けられなかった。
(実績:ドックでは途中棄権。個人病院の全身麻酔で2回)
みんなに話してもそこまでつらい思いする人は少なくて、だけど本当につらい人も一定数はいて、きっと体の構造とか体質とかで、ひとによってつらさが違うのだと思う。
こんなにからだに負担がかかることを、本当に年に一回やらなければならないのだろうかとはなはだ疑問だった。
退職したら絶対もう受けないと思っていた。
でも母が70才で胃がんになった。
スポーツ好きで登山なども好きで65くらいまでずっと仕事もしていて大きな病気もしたことがなく健康だと思っていた母が、体調不良で検査したら胃がんのステージ4だと分かったときは、家族全員が本当に驚いた。
それから半年で亡くなった。
私は年に一度つらくても胃の検査をやるのが普通という環境にいたものだから、何気なく「健康診断とか受けてなかったの」と聞いてしまった。
これは今でも、後悔している。
言ってしまったすぐあと、はっとした。
「検査を受けてればもっと早く分かったのに」という気持ちからだが、事実そうかもしれないが、その言葉は母を傷つけたに違いない。
検査を受けないことが悪いことではないはずだ。
母のことだからいろいろ考えたあげく受けなかったわけではなく、ただそういう環境にいなかっただけだ。
それまで大きな病気もしなかっただけに、よけいに病院や検査というものとは縁がなかったのだ。
それは非難されるようなことでは決してない。
退職したら義務でないとしたらあんなにつらいバリウムも胃カメラももうしたくない!と思っていたが、さて、無職となって自由になった私はどうしたものかと迷う、悩む。
そんな私が最近読んだ本をご紹介します。
新聞か何かで読んで興味を持って買った本ですが、絶版なのか中古でしか買えません。しかもメルカリなどでは定価以上の値段で取引されており、出品されるやいなや売れてしまいます。
「看取り先生の遺言」 奥野修司著 文春文庫 2016年
岡部健医師の「遺書」という形で、本人から聞き取りしたことが書かれた本である。
岡部医師は若い頃はがんセンターの大病院でがんを積極的に治療していたが、のちに治らないがん患者の終末期を在宅で看取るという方向にシフトした先生である。
自身も最後は胃がんにかかり、自分のからだを実験台のようにして、がんの経過や感情まで語り継がれたことが記されている。
〇なおるガンとなおらないガンがあるのに、なおらないガンまでも今の医療は治療し続けるから患者も家族もつらい
〇人間のからだはよくできていて、亡くなる最後は痛みを感じないように自然に死んでいけるようにできている(のに、医療がそれを妨げている)
〇抗がん剤の考え方(メリットとデメリット)
〇胃ろうの是非について
〇死ぬことは怖くない。あの世から親しい人がお迎えがくる。という伝統的日本的考え方とその実際。
この本を読んだら、死ぬのは怖くないような気がしてきた。
もう一回いつか死ぬ前にはこの本を読み返そうと思っている。(夫にも読ませたら同じような感想だった)
亡くなった親しい人や犬たちとまた会えると思えるようになった。(という考え方を知った)
で、その岡部医師は、がん検診など受けたことがなかった人である。
何百何千の症例を診てきて、受けても受けなくてもどっちもどっちという考えのもとである。
じゃ、私も受けなくていいかな?とも思ったが、考えるなあ。
そこまでつらくない乳がん検診と子宮頸がん検診は、市政だよりを見て、ちゃんと自分で予約して先日受けて参りました。
うーん、バリウムは・・・・もう二度と受けない!!と決めなくてもいいか。
白黒つけないってのも、大事なことである。
3年に一度くらい人間ドックを受けるというところで、どうだろうか・・・
高いけど。どこからも補助もないけど。
友達が大腸がん検診をえらく熱心に進めてくるけど、いや。
胃がんよりもっといや。
つらくてたまらないに決まっている。これを受けようとは今は思えない・・・